リファラル採用を推進させる6つのポイント
紹介しやすい受け皿を設計する
リファラル採用で紹介された人と会社との最初の接点を「受け皿」と呼びます。
社員にとって、友人を誘いやすい受け皿があることは、リファラルを推進する上で重要事項のひとつです。
紹介を受けた人に転職の意思があると分かっていれば、受け皿は面接や面談で問題ありません。しかし事前に転職意思がどの程度あるのか分からないケースも多く、そうした場合には、気軽に参加してもらえるカジュアルな受け皿が有効です。選考に関係のないカジュアル面談やイベント、パーティであれば、社員も友人を気軽に誘うことができます。
選考に関係のない受け皿のひとつに、社員たち自身がイベントを企画・運営するという方法があります。予算だけを人事が決め、企画から集客、当日の運営までを社員に担ってもらうというものです。
社員が企画・運営することで、自社の魅力に気付くきっかけになり、イベントの集客を主体的に行ってくれるというメリットもあります。
ここで重要なのは単にイベントを開催するだけでなく、参加者の情報を会社で蓄積し、タイミングを見て獲得したい候補者にアプローチできる状態にすること。実施したイベントについて社内に周知し、リファラルへの認識を高めることも大切です。
受け皿の具体例を、採用色の濃さと集客人数の多さで分類したのが下記の図です。
タレントプール (候補者データベース)をつくる
タレントプールは、将来再アプローチしたい人材のデータベースを指す言葉です。スキルがやや不足していた、入社希望時期が会社側の都合と合わなかったなどの理由で採用に至らなかった採用候補者のデータが蓄積されます。
リファラル採用におけるタレントプールはそれとはやや意味が異なります。現在募集しているポジションや相手の転職意向といった要因を問わず、将来一緒に働きたい人を社員全員でストックしていくデータを指します。
社員が蓄積したタレントプールによって、長期的にアプローチできる人材が増える、自社の社員が共に働きたいと考える人材の特徴が把握できるといったメリットが生まれます。
タレントプールを活用するには、コンタクトを毎月1回取る、初回の接点から3か月後に再度連絡といったプランを、候補者ごとに決めておくことを推奨します。また、リストに追加する候補者増を狙ったイベントの開催、リストへの追加を定期的に社員に呼びかけることも重要です。
メモリーパレスで紹介できる人材を探す
リファラル採用におけるメモリーパレスとは、社員の知人・友人の中から紹介してもらう人材の候補を掘り起こす作業のことです。
メモリーパレスは基本的に以下の流れで実施します。
- 社員に自社のリファラル採用の概要と目的を伝え、協力を要請
- 社員が紹介する候補としてすぐに思い付く知り合いや友人の名前をシートに記入
- 社員に普段使っているSNSなどで交流のある人々の情報をじっくり見てもらい、その中にすぐには思い出せなかった候補者がいないか確認。その名前をシートに追加、書き出した知人を「一緒に働きたい」「声をかけやすい」の2点で分類してリストを作成
- 作成したリストから「いま声をかけたい人」を選び、イベントやパーティなどの受け皿に招待する
このメモリーパレスを定期的に実施することで、紹介件数の増加が期待できます。同時に社員が候補者選定をする際の手順や基準を把握でき、人事から改善点などをアドバイスする機会にもなります。
さらに、より本格的なメモリーパレスを実施する企業もあります。ここでは「いま声をかけたい人」を選んだ理由、その人への連絡手段、その後のアクションについても記入してもらい、社員同士で紹介までの手順に関するアイデアを出し合います。
こうした試みによってタレントプールの増加、紹介のコツを社内で共有できるといった効果が期待できます。
リファラル採用を社外周知する
リファラル採用に取り組んでいることを、積極的に社外にも発信しましょう。
その際は「社員が会社を好きと感じる点」が、社員の言葉で具体的に語られること。事業内容や経営理念、自身の担当業務のやりがい、研修プログラム、社内イベントなど、個々の社員が感じる会社の魅力。また、その魅力を伝えるブログや動画を自社メディアや採用情報メディアに定期的に掲載し、社員が使っているSNSなどでも紹介してもらうことで、多くの人の目に触れる取り組みを進めます。
こうした活動によって、会社の存在を知り、注目する社外の人が徐々に増えていくことが期待できます。
リファラル採用の導入と同時に、上記のような「自社の魅力を社員が語る」広報活動にも取り組んだ結果、短期間でリファラルでの採用数や採用比率が急速に増加するという成果を挙げている企業も少なくありません。
また会社からの発信を見た社員の友人が社員に声をかけ、紹介が発生したといった事例は多く、直接採用につながる可能性も高い施策だと言えます。
このように社内だけでなく、社外に対しても会社の取り組みや魅力を積極的に伝えていくことで、リファラルは推進されやすくなります。
紹介してくれた社員への感謝を社内に周知する
友人を紹介した社員への会社からの感謝を社内に周知することは、リファラル採用を推進する重要点のひとつです。
「Aさんから紹介していただいたBさんと面談を行いました。ありがとうございます!」といった言葉を周知文に記載するだけで十分です。こうした感謝のメッセージを周知すれば、他の社員がリファラルに関心を持つきっかけになります。社員が仲間を集めようとしていることを知ることで、リファラル採用に協力しようとする社内の意識を高める効果もあるでしょう。
また社内で利用しているチャットツールなどでリファラルに関する発信があった場合に、経営陣や人事がすぐにコメントやスタンプで反応することを習慣化することもおすすめします。「会社はリファラルを重視している」「社員の貢献をしっかり見ている」ことを社員に実感してもらえるはずです。
リレーブログで社員の顔を見えるようにする
社員たちが会社の事業や雰囲気、自身の業務などに関する情報を社内だけでなく社外にも定期的に発信・共有している企業は、リファラル採用が推進されやすい傾向にあります。社員がSNS上で勤務先に関する記事を投稿したことがきっかけとなり、記事を見た友人が会社に興味を持った結果、紹介が発生した例は多数あります。
株式会社リフカムでは、社員が気軽に会社や仕事に関する情報を発信・共有できるリレーブログを行なっています。社長を含む社員全員が週替りで会社や仕事について自由にブログ記事を作成し、社内外に発信しています。
同様の試みとして、社員が作成した会社紹介ムービーを定期的に発信している企業もあります。
リファラル採用がうまくいかない時の対応策は?
リファラルスコアで状況を可視化する
リファラルスコアとは、リファラル推進の土台になる項目を点数化したもの。社員に項目ごとに評価してもらうアンケートやヒアリングなどを実施し、そのスコアからリファラルの推進を阻む要因を明らかにします。課題を特定して、行動プランの見直しなどを進めましょう。
リファラルスコアの評価項目
- 制度認知 リファラル採用の認知度を測定する項目。このスコアが低い場合は社内広報の手法を見直しましょう。
- ポジション認知 会社が募集しているポジション (営業、エンジニア、経理等)を社員が認知しているかをチェックする項目。リファラル制度を認知していても、ポジション認知が低ければ紹介は発生しにくくなります。
- ペルソナ認知 会社が採用したい具体的な人物像 (経験年数や職務経歴等)の認知度が低ければ紹介は発生しづらくなります。明確な募集要件を周知しましょう。
- 人脈 社員の人脈はリファラルを推進する必須要素です。このスコアが低い場合は、人脈を広げるセミナーや社外勉強会への参加促進などが有効です。
- 魅力伝達 会社の魅力を社員が把握しているかをチェックする項目。職場環境の整備や福利厚生制度などを周知することでスコアアップが期待できます。
- 紹介手順の煩雑さ 紹介手順の煩雑さを評価する項目。紹介へ至るプロセスの簡略化などの改善策を検討すべきでしょう。
- 心理的ハードル 紹介した友人の選考結果への不安など、社員が紹介をためらってしまう心理的要因をスコア化する項目。選考フローの透明化などを実践すべきです。
リファラル採用がうまくいかない会社の特徴
リファラル採用がうまくいかない会社には、共通する要因がいくつかあります。そうした失敗の要因となるポイントについて説明します。
- 人事だけで推進しようとする リファラルは人事だけでは実施できない制度です。成功させるにはできるだけ多くの社員に協力してもらい、主体的に取り組んでもらう必要があります。
- 推進策がインセンティブのみ リファラルを推進する施策が報酬 (インセンティブ)だけで、期待したような結果が出ないケースは多く存在します。リファラルに取り組む理由やリファラルと並行して実施する職場環境の整備といった情報を分かりやすく周知し、社員が積極的に友人を紹介したいと思える仕組み作りを進めることが重要です。
- 紹介に対する心理的ハードルが高い 紹介後の選考結果などに不安を感じ、紹介をためらう社員が多いという状況もよく見受けられます。紹介はあくまで、きっかけであることを社員に理解してもらい、募集するポジションやペルソナ像、選考フローを社員に具体的に伝えるといった対策をしましょう。
- 社員に紹介できる友人がいない 紹介する人が思い浮かばないという声が社員から多く出されるケースです。上に紹介したメモリーパレスを実施することによって、課題が改善へと向かう可能性があります。
- を紹介したいと思われていない
社員が会社を紹介したいと思っていないから行動しない場合もあります。自社を友人に、積極的に紹介したいと社員に思われるよう、魅力ある会社作りに取り組むことが大切です。
ネガティブアプローチで課題を解決する
ネガティブアプローチとは、リファラル採用の推進を阻害する要因を明らかにし、その解決策を企画・実践する方法です。
ネガティブアプローチでは「動いてほしいターゲット層がどうして動いてくれないのか」という阻害要因を詳細に検討することが重要となります。
検討すべきポイントはこの2点です。
- ターゲットの設定 人事が動かしたいターゲットを定め、そのターゲットの属性に応じた推進策を実施します。採用したい人材と同じ出身校や同年代、経歴から採用したいポジションとの接点が多いと予想される社員、人事が働きかけることで主体的に動いてくれることが期待できる社員などをターゲットに設定します。
- 阻害要因の分析 設定したターゲットが思ったように動いてくれない原因を分析します。分析すべき阻害要因としては以下のような項目が想定されます。
- 認知不足の壁 制度やツールへの関心が低く、周知する機会はあっても社員の印象に残っていない状況。周知不足が主な課題なので、オフライン・オンラインの周知機会を充実させる必要があります。
- 知識欠如の壁 制度やツールが理解されていない状況。社員にとって何が理解しにくいのかを把握し、疑問に対応する施策を実施しましょう。
- 他人事感の壁 制度やツールが自分に関係あると思えていない状況。社員への情報提供の方法や内容に問題があることが多いので、より細かく要因を探る必要があります。
- 面倒くささの壁 ツール利用を面倒だと感じ、利用しないままになっている状況。ツール利用の体験会を開催するといった対応が効果的です。
- 全体主義の壁 周囲より先に自分が制度やツールを利用することをためらっている状況。実際に制度やツールを利用している社員の感想や意見などを周知し、利用しやすい雰囲気を形成しましょう。
以上のようなポイントを踏まえて阻害要因を想定し、社員へのアンケートやヒアリングによって課題を特定した上で、改善策を実行していきます。
リファラル採用を推進させるパートナーも
ここで紹介したリファラル採用を推進する上で重視すべきポイント、リファラルがうまく進まない際の原因をの明確化、効果的な施策そして最終的に成果を出すための参考になれば幸いです。
リファラル採用の推進や課題解決に関して、ノウハウを直接聞きたい、相談したいという場合は専門性の高いサービスを提供する企業に頼るのも良いでしょう。
リファラルの課題解決を支援するサービスの中には、採用だけでなく、従業員の会社・業務に取り組む意欲の向上にもアプローチできるものもあります。社員満足度を上げ、社外に自慢したくなるような企業文化を醸成することで、リファラル採用を推し進めましょう。