課題1 報酬 (インセンティブ)の決め方

リファラル 紹介者、目標達成見込みなし

STEP1 リファラル採用で改善したい数値を決める

まず第一に、自社の人材採用における問題点が何かを改めて検討し、優先的に改善を目指すポイントを明確にすることです。
たとえば、会社説明会などの参加者数や採用試験への応募数が少ないことが問題なのか?応募者の中で「採用したい」と思える人材が少ないのか?あるいは「採用後の定着率」が低いのか?リファラル採用の導入によって改善したいポイントを絞り込むことが先決です。
説明会の参加者や採用試験への応募者数を増やすことが最大のポイントならば、参加や応募があった段階で報酬 (インセンティブ)を出すことが有効でしょう。採用したい人材がそもそも少ないことが問題ならば、採用が決定した時点で報酬を与えるべきだと考えられます。

STEP2 報酬を与える対象を決める

入社する人とチームへの報酬
一般的には、インセンティブを与える対象は紹介をした社員になります。
また紹介された人に対してもインセンティブを与える方法もあります。この方法によって「うちの会社にこういう制度があるんだけど」と、制度そのものをきっかけに、社員が採用の話題を相手にしやすくなる効果が期待できます。
すでに転職活動中、あるいは具体的に転職を考えている友人・知人がいれば「うちの会社はどう?」と聞きやすいですが、こうした状況の人だけを対象にしてしまうと候補者の数は極端に限られてしまいます。「すぐに転職したいわけではないが興味はある」といった、転職予備軍の人にもアプローチできれば、中長期的に応募数の増加につながります。
こうしたメリットを考慮し、紹介を受ける人へのインセンティブも検討すべきでしょう。
また紹介者だけでなく、所属するチームや部署にもインセンティブを与えることで、リファラル採用への興味や関心を、社内に広めていくといった制度を実施している企業もあります。

STEP3 報酬金額を決める (予算策定)

リファラル 応募者探している電話
インセンティブの金額は、実は高ければ高いほど良いわけではありません。
友人・知人への声の掛けやすさはリファラル採用で重視したいポイントですが、予め高額な報酬を用意してしまうと、「お金がほしくて声を掛けたと思われたくない」と思う社員も出てきます。逆に報酬を目的にして会社が求めている人材とはマッチしない人ばかり紹介されても、採用に至る可能性は低いでしょう。
では、報酬額はどの程度が妥当なのでしょうか? 会社や採用対象によってさまざまですが、大まかな目安として3万円〜10万円の範囲で設定している会社が多いと言われています。下の表は2018年に民間企業が実施したリファラル採用の報酬額に関する調査結果です。

■リファラル採用の報酬額

リファラル報酬額比率
※出典 リファラル採用に関するアンケート (株式会社リフカム調べ 2018年3月実施)
もちろんこうした目安は「採用が難しい専門職の採用」「新卒・第二新卒の採用」「非正規の採用」などによって変わります。たとえば簿記1級などの資格を持った経理業務経験者では相場以上の報酬が用意されることが多く、「非正規の採用」では一般的に数千円〜1万円が多いとされています。
また紹介者に現金ではなく特別有給休暇を与える、会社の採用活動に貢献した実績として社員の人事評価に加えるといったケースも存在します。
重要なのは、会社として改善したい項目に即した報酬の対象や金額を設定することでしょう。

課題2 リファラル採用が進む仕組みづくり

STEP1 社員の協力状況を可視化する

リファラル採用の浸透
社員にリファラル採用がどの程度認知されているのかを可視化することは、リファラル採用によってリクルーティングの課題を改善させる上で必要不可欠です。
基本的な可視化の手順は以下のようになります。

1. 社員への調査

  • 制度の存在を知っているか
  • 紹介方法を知っているか
  • 紹介する時のハードルか
  • 紹介をためらってしまう理由
といった項目を全社員にアンケートをし、リファラル採用への意識や行動から社員を3つのセグメントに分類します。

2.セグメント別に社員への働きかけを実施

3つのセグメントの内訳は下記の通りです。
①紹介したいと思っており、紹介できている社員群
②紹介したいと思っているが、紹介できていない社員群
③紹介したくない社員群
割合の大きさは③、②、①の順となることが一般的です。
③の社員を②に変える、②の社員を①に変えることを目的に、社員への働きかけや相談対応を実施します。
各セグメントの社員に即した働きかけや対応は、主に下記のような内容です。
  • ①の社員 さらに紹介がしやすくなる手順やツールについての意見交換
  • ②の社員 紹介する上での障壁を明らかにし、その障壁を取り除く支援を検討・実施
  • ③の社員 紹介したいと思ってもらうための社内アクションの検討・実施

3.紹介したいと社員が思う組織作り

そもそもリファラル採用は紹介したいと社員が思っていない限り発生しません。リファラル採用を定着させるには、各セグメントの社員から出された意見を参考にした組織改善も、同時に実施すべきでしょう。
経営陣が社員の声を聞いて改善策を発表することは、社員の満足度を向上させ、「友人に紹介したい」と社員が思う会社作りのための重要なプロセスです。
こうした社員への意識調査と各セグメントに対するアクションを定期的に実施して可視化することで、リファラル採用を推進する上での課題や効果のある施策を明確にすることができます。

STEP2 社員が協力しやすい仕組みを用意する

リファラル 情報提供と接点作り
リファラル採用を会社全体に浸透させて成果をあげるには、紹介者である社員と会社が互いに協力しやすい制度作りが大切です。
中でも「採用したい人材の情報提供」と「友人を誘いやすい会社との接点作り」の2つは、重要度の高いポイントでしょう。

採用したい人材の情報提供

まずリファラル採用を通じて入社してほしい人材の具体的な条件を明確にし、社員と共有します。 所属部署や経験、保有スキル、担当業務など、会社が採用したい人材の条件を具体的に社員に周知することで、社員は「あの人なら会社のニーズに合っている」という根拠を持った上で友人に話をすることができます。
採用条件に合いそうな人たちと普段から交流のある社員がいる場合は、面談で友人や知人の転職に関する意識や現状などをヒアリングした上で、採用への協力を働きかけることも有効でしょう。

友人を誘いやすい会社との接点作り

社員が友人を誘いやすい機会を工夫することも重要です。 紹介された友人と、会社との最初の接点を工夫することで、社員が感じる友人の紹介しやすさは大きく変わります。 一般的にリファラル採用における、会社との最初の接点には、以下のようなものがあります。 (※フォーマルな順に記載)
  • 面接
  • 選考に関係のない面談 (カジュアル面談)
  • 会社説明会
  • ミートアップ (パーティ形式の会社説明会)
  • パーティ
  • 部活動、イベントなどへの参加
面接に友人を誘うよりも、カジュアル面談などに誘う方が紹介する社員にとっては気軽です。ミートアップやイベントで、まず会社の雰囲気を知ってもらう場合も、社員から友人を誘う心理的なハードルは低いでしょう。

STEP3 リファラル採用の推進体制をつくる

リファラルが運用出来ている様子
次にリファラル採用の推進体制について説明します。 リファラル推進体制とは、リファラル採用を円滑に運用していくための社内チームを設置することです。 セクションごとに推進リーダーを設け、採用担当と推進リーダーの2者から情報を発信することで、リファラル採用の推進を目指します。

■リファラル推進体制イメージ

リファラル採用推進体制を整備することで、以下のようなメリットが期待できます。
  • リーダーから社員へ、定期的にリファラル採用に関する情報発信口頭での発信ができる
  • リファラル採用に関する疑問や質問への対応がセクション内で可能になる
  • 採用担当から発信された情報に不足があった場合リーダーが補える

課題3 リファラル採用を円滑に運用するために

リファラル採用の良い進め方とダメな進め方

成果指標をつくる

リファラル採用の成果指標とされる、主なKPIは以下の通りです。
  • 紹介してくれた従業員の人数
  • 従業員数全体における紹介してくれた従業員数の比率
  • リファラルでの応募人数
  • リファラルで入社した人数
  • 1人当たりの採用単価
  • 採用人数全体におけるリファラル経由採用人数の比率
会社によってKPI設定に対する考え方は異なります。が、そもそも「なぜリファラル採用に取り組むのか」という視点に立ち返れば、「従業員数全体における紹介してくれた従業員数の比率」と「採用人数全体におけるリファラル経由採用人数の比率」は特に重要でしょう。
リファラル採用を成功させやすい会社にとってのリファラルは、単なる「採用目標未達分の穴埋め」の手段でも、採用の工数や単価を下げるためのものでもありません。
こうした会社では、社員が「会社のことを知人に紹介したい」と思ってくれる職場作りを目指し、リファラル採用を通じての入社が続くことをゴールに描いています。リファラル採用だけのテーマではなく、組織全体のテーマにしているのです。
逆に採用人数や単価だけに注目してリファラル採用に取り組んだ場合、成果が出ないまま終わってしまうケースも少なくありません。なぜなら、リファラル採用というものは採用担当だけが短期集中的に取り組むべき制度ではないからです。
人事がリファラルについて社員への周知や働きかけを頻繁に行い、高額なインセンティブを用意しても、社員が自社に対し良いイメージがなければ、紹介は発生しません。リファラルを活性化するには、「紹介したい会社」を創っていくことが何より重要です。
上に記した「従業員数全体における紹介してくれた従業員数の比率」と「採用人数全体におけるリファラル経由採用人数の比率」は、長期的なビジョンを持って紹介したい会社作りを目指す上で最適なKPIでしょう。

成果を可視化する

リファラル採用成果の可視化
リファラル採用の運用における問題点を分析するには、リファラル採用の成果を可視化する必要があります。客観的なデータを踏まえて、問題への対処法を検討しましょう。
成果の可視化法の中でも代表的な、リファラル採用ファネルについて紹介します。

■リファラル採用ファネル

リファラル採用プロセス
※出典 Referral Insight
ファネルによって、採用プロセスのどの部分に問題があるのかを把握することができます。
求人情報や紹介制度の認知度が低いのか、社員が動いていないのか、あるいは社員は誘っていたとしても、その友人が断っているのか。リファラル採用のプロセスのどこで問題が生じているかによって、当然対応策も異なります。改善すべき部分を採用プロセスの中から切り分けて対処することは、リファラルの円滑な運用に不可欠です。

PDCAを回す

リファラル採用のPDCAを回している
期間を決めてPDCAサイクルを継続的に何度も循環させることはリファラル採用で成果を上げる条件のひとつ。自社に合った運用法が見えてくるはずです。
以下に代表的なPDCAサイクルのイメージを紹介します。

PLAN=計画

リファラル採用のPLANには目標設定、制度設計 (推進体制、フロー、評価報酬など)、役割分担などがあります。
目標を設定する際に、他社の社員の協力率や紹介数、紹介を受けた人の応募率、採用率といったデータは参考になります。が、鵜呑みにしすぎてはいけません。まず優先すべきは、これまでの自社の説明会参加数や応募数、採用数などのデータです。過去のデータをチェックすることで、その会社がリファラル導入によって改善すべき人材採用の課題が明確になります。
そうした課題を踏まえ、会社の現状とニーズに即した独自の目標設定、制度設計を行いましょう。また計画を立てる際には、会社に対する社員の満足度や意見を把握する必要があります。アンケートやヒアリングといった方法で、社員の声を収集することは、計画作りに役立ちます。

DO=実行

立案した計画に沿って、社員へのリファラルに関する情報提供から協力の要請、説明会やイベントの準備・運営、選考に至るまでの業務フローを具体化させ、実行に移していきます。
実行フェーズでの重要点は、紹介者となる社員が精神的な負担や面倒さを感じることのないよう十分に配慮しながら、業務を進めていくことです。

CHECK=評価

実行フェーズで可視化したデータを分析し、その要因を振り返ります。
公正に評価するためには、ひとつのアクションを起こす前後に、複数のチェック項目を設定しておく必要があります。主な項目としては、社員のリファラル認知度、紹介社員数、スカウト数、応募者数、採用者数などがあります。
また、どのような周知法が効果的だったか、紹介をした社員の特徴などもチェックすべき項目でしょう。

ACTION=改善

評価を見た上で、良かった点は継続させ、悪かった部分はどう改善するか考えます。 PLANに対し継続することと修正することを決め、次のPLANを策定します。
リファラル採用に関する行動と結果が可視化されていれば、自社に最適な試みを選択することも容易になります。
PDCAを綿密に回すことで、自社に合ったリファラル採用を進めていくことができるはずです。

リファラル採用の課題を解決するために

会社の文化にマッチした人材を効率良く獲得でき、入社後の定着率向上も期待できるリファラル採用。この制度が社内で認知され、円滑に運用されるようになれば、大きなメリットを生む採用手法だと言えます。
しかしリファラル採用を活性化させるには、社員が主体的に行動する必要があるため、人事担当者だけでは判断や対応が難しい側面もあります。
そうしたリファラル採用の課題解決を支援するサービスもでてきています。「紹介したくなる会社づくり」を実現させるノウハウを持つサービス提供者に自社で抱えている課題について相談してみましょう。

「リファラル採用」の課題を解決できるサービス

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