カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセスとは
「カスタマーサクセス」とは、直訳の通り「顧客の成功」です。具体的には、顧客を目指すゴールへ導くために、サービス提供者が顧客に伴走して能動的にサポートする業務になります。 実際の業務としては、「営業」や「カスタマーサポート」、施策によっては「マーケティング」などが該当します。営業であれば売上げを上げること、カスタマーサポートであれば顧客から問い合せがあった課題を解決すること、のように目的は異なります。 「カスタマーサクセス」の役割は、顧客がサービスを利用することで成果を出し、ひいてはサービス提供者側 (自社)の利益を上げることを目標とします。 当然ながら「顧客の成功」はケースバイケースです。そのため、具体的な施策の内容や指標は一律に定義できるものではありません。提供するサービスの特性、顧客の希望や状況、そして自社の状況によって、今何をしなければいけないか、今後どうすれば良いかといった仮説をたてて、着実に実行していくことが重要です。

なぜカスタマーサクセスが必要なのか

サブスクリプションビジネスは、継続的に売上げを積み重ねていくビジネスモデルです。別名「ざぶとんビジネス」とも言われています。売り切りのサービスとは異なり、顧客は数ヶ月から数年単位で契約を結び、その間サービスを利用できる「ライセンス」に対価を支払います。契約を解除されずに利用し続けてもらうことが、このビジネスのポイントです。そのための役割が「カスタマーサクセス」です。
従来は、いかに長く利用してもらうかについては、営業とカスタマーサポートが担うことが多く、今もその2つに依拠しているサービス提供者も多いでしょう。 本来は、営業の仕事は新規契約の獲得、既存契約の更新やアップセル・クロスセルで、カスタマーサポートは顧客の問い合わせを受けて課題を解決することです。 カスタマーサクセスは、サービスの利用促進がミッションですから、営業やカスタマーサポートの本来の業務とは異なるはずなのです。

カスタマーサポートとの違いとは?

カスタマーサポートとの違い
導入後の顧客の課題を解決するという意味では、カスタマーサクセスもカスタマーサポートも同じです。何が異なるのか、業務のスタンスで比較してみます。

対応スタンス

カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに「受動的」に対応します。また、基本的には電話やオンラインでの対応に限られ、顧客と対面してコミュニケーションをとることは滅多にありません。
一方、カスタマーサクセスは顧客に製品やサービスの価値を認識してもらい、利用を定着してもらうための「能動的」な業務です。そのためには、実際に訪問する他に、チャットやWeb会議をするなど顧客とのコミュニケーション方法も柔軟に対応し、サービスを利用する目的を顧客ごとに設定しなければならないこともあるでしょう。問い合わせを待つのではなく、先手を打って顧客に活用方法の提案といった利用率を上げるための活動を行っていきます。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスの業務内容

前述の通り、カスタマーサクセスの業務は顧客にサービスを利用し続けてもらうための活動全般を指します。一般的には以下のような業務で構成されることが多いでしょう。

解決策を素早く提案する

カスタマーサクセスの対応
導入する時点では、解決したい課題 (導入する目的) があり、それを解決できそうだと期待したからサービスを利用します。しかし、いざ使い始めてみると、「思っていたものと違う」ということもあり得ます。実際に利用してみないと分からないことは、どうしても出てくるからです。操作が想像以上に複雑で面倒臭く感じられたり、機能自体がイメージと違ったりといったことです。導入時の顧客の期待値を下げるミスマッチに対応すべく、目標の達成に向けて解決策の提案をよくよく練っておくことが重要です。
利用促進のためには、顧客の状況に合わせて新たな目的の設定が必要になります。他の企業の成功事例を紹介してベンチマークとしてもらい、利用のモチベーションを上げるのも手です。

オンボーディングサポート

カスタマーサクセスのオンボーディング対応
顧客がサービスの運用を安定的に行えるまでのサポートを指します。サービスの使い方をレクチャーしたり、顧客に合った運用を提案することです。運用の担当者が変更になった場合などにも、このサポートは必要になります。
サービスの使い方は、導入決定前に、営業が管理画面でデモをしたり、具体的なワークフローや利用イメージを説明します。しかしいざ利用してみると、使い始めのハードルが意外と高いことはよくあります。また既存のオペレーションがある場合、切り替えたら便利になるとわかっているものの、慣れた手順からなかなか離れられない、といった場合もあります。
運用がネックとなり利用が進まず顧客が離れる結果にならないよう、しっかりと定着させられるようにフォローアップをします。

ユーザー会の開催

カスタマーサクセスのユーザー会開催
ユーザー会とは、同じような課題、業界、目的などをもった顧客を定期的に集めて、成功のノウハウをシェアしたり、顧客同士が交流をしたりする場です。
「自分は使いこなせているのか」「他の企業はどうしているのだろう」と不安を抱えたままサービスを利用している顧客もいます。しかし、そのような担当者の多くは、社内に相談できる人がいません。そこで顧客同士で交流してもらい、自社の取組や成功事例をシェアすることで、新しい発見やモチベーションを高めてもらうのです。
サービス提供者側としても、顧客数が増えるにつれ、全ての顧客に均等に訪問して支援することが物理的に難しくなります。そのソリューションのひとつとして、「ユーザーコミュニティー」を作って機能させておくことは重要です。成功事例を起点として、現場目線で取り組み内容や結果を話してもらうことで、他の顧客にも成功が波及すればお互い大きなメリットが得られます。

新機能開発や機能改善のフィードバック

カスタマーサクセスのフィードバック
顧客のサポートをしていると、「こんな機能があったら良い」「この機能を改善してほしい」といった要望がでてきます。そういった要望を集約して、社内で共有します。
サブスクリプションモデルとは、最大公約数のサービスです。つまり1社にしか必要でない機能ではなく、100社が必要とする機能を定義して、サービスの開発を行います。サービスの機能拡張をする際は顧客が必要としている機能を開発するのが最も合理的です。顧客の声がビジネスチャンスに直結しやすいので、専任の担当として真摯に受けることが重要になってきます。
また直接的な要望でなくとも、課題を聞いているうちに、こんな機能があれば良いのではないかと、思いつくこともあるでしょう。顧客とのコミュニケーションが重要なのは、こういった側面もあるのです。

ドキュメントの整備

カスタマーサクセスのドキュメント
顧客の対応をしていると、その企業特有の課題と、共通している課題の2種類があることが見えてきます。顧客数が多くなると共通している課題に都度対応するのは非効率です。
そのような場合、Webサイトに掲載するドキュメントを用意しておくとよいでしょう。説明する際も、まずはドキュメントを見てもらい、わからない部分のみを個別フォローするほうが、効率を上げられます。 マーケティングチームやサポートチームと共同で行うことも多いので、ドキュメントでの情報共有は対顧客だけでなく社内でもメリットが大きいです。 さらに、顧客ごとにどのページを見ているかまで測定できれば、カスタマーサクセスの精度をより上げていくことが可能になるでしょう。

カスタマーサクセスをはかる指標

営業であれば「売上げ目標」、カスタマーサポートでは「問い合わせの対応件数」と「対応内容に対する満足度」がわかりやすい指標として存在するでしょう。
カスタマーサクセスではどうでしょうか?大別すると「契約面」、サービスと対応など顧客満足度に関する「利用面」によって変わってきます。実際、これらの指標を組み合わせて、カスタマーサクセスの評価としている企業が多いでしょう。

契約面

カスタマーサクセスの契約面の対応

LTV (LIFE TIME VALUE=ライフタイムバリュー)

「生涯顧客価値」と訳されます。1顧客が、顧客になってから解約するまでにどれくらい利用料金を支払うかという指標です。LTVが重要なのは、新規顧客獲得のコストが大きいからです。一般的にそのコストは、既存顧客に再販した場合と比較して「5倍」かかると言われています。これは「1:5の法則」と呼ばれ、米国のコンサルティングファーム「ベイン・アンド・カンパニー」とそのコンサルタントであるフレデリック・ライクヘルドによって提唱されています。だからこそ、一度獲得した顧客に可能な限り長く利用し続けてもらうことが重要になるのです。
例として以下の表で比べてみましょう。顧客単価が安いサービスAは、平均利用年数も長く、1顧客当たりLTV ¥3,600,000です。サービスBは顧客単価が高く、平均利用年数は短く、LTV ¥3,200,000 です。どちらが良い悪いではなく、どちらもLTVを指標とし、そこを伸ばすためにはどうすれば良いかというベクトルで考えることが重要です。基本的には、サービスの利用年数を伸ばすか、契約金額を伸ばしていくことになります。
LTV(ライフタイムバリュー)図表

解約率 (チャーンレート)

積み上げ式に売上げを伸ばしていくサブスクリプションモデルの場合、利用し続けてもらうことが重要です。解約率が指標になりますが、解約率にも大きく2つ存在します。
  • カスタマーチャーンレート
    • 顧客数をベースとした算出方法です。100社の新規契約を獲得し、翌月98社が利用継続となれば、カスタマーチャーンレートは2%です。計算式は「(失った顧客数/顧客数)×100」です。ビジネス向けのサブスクリプションは、年契約のサービスも多いので、その場合には1ヵ月ではなく、3ヵ月単位でその期間内の成果を追っていくという考え方もあります。
  • レベニューチャーンレート
    • 売上げをベースとした算出方法です。毎月の月初時点の MRR を分母とし、月末時点の MRR を分子とします。MRR は、Monthly Recurring Revenue の略称で、契約金額を契約月数で割った金額です。12ヵ月で120万円のプランの契約があれば、MRR は 10万です。10社と契約すれば、MRR は 100万です。レベニューチャーンレートの計算式は「(失ったMRR / MRR)×100」です。1社の契約がなくなれば、レベニューチャーンレートは10%になります。サービスプランが複数存在する場合には、こちらの数値を追う方が良いでしょう。
チャーンレートの考え方は非常に重要なため、以下の記事で詳しく説明をしています。
継続成長していくために必要な「チャーンレート (解約率)」とは

利用面

カスタマーサクセスの対応判断

ヘルススコア

ヘルススコアとは、顧客のサービス利用状況を数値化したものです。ヘルススコアが指標たりえるのは、解約率との相関があるためです。ある顧客のヘルススコアが一定水準を下回った状態が続くと、解約されるリスクが極めて高くなります」。そのため、ヘルススコアが悪ければコンタクトをとり、問題点を改善するという対応が必要になります。
ヘルススコアの評価指標で多いのは「アクティブ率」と「各機能の利用率」です。具体的には、サービスへのログイン率や更新頻度といった基本的なサービスの利用率、またサービスの利用容量、機能の利用率などです。 利用が定着している企業の数値を基準値とします。まずはその企業の利用量をスコアリングします。その数値と乖離のある企業を優先的にフォローアップするように対応します。
その際、ログインはしているけれども利用率が少ないのであれば利用率を増やす提案を、そもそもログインすらしていないのであれば原因をヒアリングするなど、ケースバイケースでの対応が必要です。
例えば、あるサービスが100ユーザー分購入されたとします。しかし、半分の50ユーザーしか利用していません。利用していない50ユーザーにサービスの存在を周知できていないのか、もしくは周知はできているが使い勝手が悪くて使われていないのかで、フォローの内容は変わります。この状態を放置すると、更新時に50ユーザー分は解約されてしまう可能性が高くなります。まずは現状の数値を把握して、問題点を特定することが何よりも重要です。
以下は、直接的かつ最終的な評価指標ではないものの、関連する可能性のある中間指標です。

回答速度

ユーザーからの問い合わせに対して、回答時間で評価している企業もあるでしょう。このあたりはカスタマーサポートと変わらないかもしれません。最近だとメールではなく、チャットツールを用いて顧客の悩みに即座に回答できる体制を整えているベンダーも多くなってきました。

NPS (Net Promoter Score=ネットプロモータースコア)

「顧客ロイヤルティーの指標」と訳される、顧客満足度のデータです。 NPSは顧客に「このサービス(製品、ブランドなど)をあなたの友人や同僚に勧める可能性はどれくらいですか?」という質問をし、0(全く思わない)~10(非常にそう思う)の11段階評価で答えてもらうという、簡単な調査で得られるスコアです。

定期アンケート

訪問後に送るアンケートと、利用開始以降のタイミングで送付するアンケートがあります。利用開始以降については、開始直後、1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後でそれぞれアンケートを送ってサービスの利用状況をヒアリングします。このアンケートで満足度の低い顧客に対して、積極的にアプローチするようにします。

まとめ

「カスタマーサクセス」と言っても、具体的な施策や指標は企業やフェーズによって異なります。いきなり部署を作らずとも、既存の体制でできることもあるでしょう。この記事で紹介した内容で、部分的にでも取り入れられるところがあるかもしれません。 また、カスタマーサクセスは、課題や施策ごとに、それぞれ効率的に使えるクラウドサービスも存在しています。課題によっては、検討してみても良いかもしれません。

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