チャーンレートとは?
チャーンレートとは解約率のこと。
顧客数の解約率を表す「カスタマーチャーンレート」と、解約金額を表す「レベニューチャーンレート」の2種類があります。
チャーンレートの目安はどれくらいか?
「サービスの成長にはチャーンレートは2-3%以下が望ましい」と聞いたことがある人もいらっしゃるかもしれませんが、どの程度のチャーンレートが望ましいかはサブスクリプションモデルの価格や継続数によって異なるので一概には言えません。
チャーンレートの計算方法
ご説明した通り、チャーンレートは大まかに2つに分類されます。
- カスタマーチャーンレート (アカウント)
- レベニューチャーンレート (売上げ)
カスタマーチャーンレートは「(失った顧客数÷顧客数)×100」
カスタマーチャーンレートは顧客数に基づく解約率のことで、「(失った顧客数÷顧客数)×100」で算出します。顧客数は月初、失った顧客数は月末時点の数値を用います。
レベニューチャーンレートは「(失ったMRR÷MRR)×100」
金額を表すレベニューチャーンレートは、「(失ったMRR÷MRR)×100」という計算式で算出します。
MRR は「Monthly Recurring Revenue」の略称で、サブスクリプション契約している金額を契約期間で割った数値です。例えば12ヶ月契約で120万円のサービスがあった場合、MRRは10万円になります。
チャーンレート計算の具体例
例えば、次のような2社の顧客を持つSaaSベンダーがいると仮定しましょう。
- A社: 毎月1万円のプランを利用中
- B社: 毎月10万円のプランを利用中
B社が解約をした場合は以下のようになります。
- カスタマーチャーンレート: 50% (2社→1社)
- レベニューチャーンレート: 91% (MRR 11万円→MRR 1万円)
極端な例でしたが、同じ「チャーンレート」でも、カスタマーチャーンレートとレベニューチャーンレートでは、全く異なる数値になるのです。そのため、どちらの「チャーン」レートをベース指標とするかを明確にしておかないと混乱を招きます。
顧客数や取り扱うサービスのプランの価格差にも関わりますので、「チャーンレート」と言っても2種類あることを理解しておきましょう。
ネットレベニューチャーンレートの登場
チャーンレートには「カスタマーチャーンレート」と「レベニューチャーンレート」の2つがあると説明しました。
しかし、この2つは既存顧客の追加購入(アップセル)は考慮されていないため、そのまま指標として使っても実態とそぐわないケースがあります。
そこで生まれたのが「ネットレベニューチャーンレート」と呼ばれる3つ目のチャーンレートです。
ネットレベニューチャーンレートは、レベニューチャーンレートの「失った売上」に既存顧客からの「増えた売上」を合算して算出します。
ネットレベニューチャーンレートの具体例
こちらもA社とB社の例でご説明していきます。
- A社: 毎月5万円のプランを利用中
- B社: 毎月10万円のプランを利用中
A社は解約をしましたが、B社が10万円から20万円のプランに変更をしました。
- ネットレベニューチャーンレート: -33% (15万円→20万円)
A社が解約となったことでカスタマーチャーンレートは下がりましたが、B社がA社解約前のプランを上回るプランに変更したことで、ネットレベニューチャーンレートはマイナスになりました。
このようにマイナスになったチャーンレートのことを、"ネガティブチャーンレート"と呼びます。ネガティブチャーンレートが発生することは、サービスを加速的に成長をさせるために重要な要素になります。
既存顧客に使い続けていただくことが大切
ネガティブチャーンレートは既存顧客の契約によって発生するため、既存顧客の維持率を表すカスタマーチャーンレートが大きく関わってきます。
一般的に、新規顧客を獲得するには既存顧客から売上を得続けるのに対して、5倍以上の労力を要すると言われています。
アップセルやクロスセル(他サービスの購入による顧客単価の向上)を狙うにしろ、既存のお客様を残し続けることは、ネガティブチャーンレートを生む上でも非常に大きな役割を持っているのです。
どのチャーンレートをみるべき?
ここまで、「カスタマーチャーンレート」、「レベニューチャーンレート」、「ネットレベニューチャーンレート」という3つのチャーンレートをみてきましたが、どれを指標とするべきでしょうか。
そのために必要なのが、「提供するサービスの価格帯」を見ることです。提供するサービスが複数あったとしても、提供する価格帯が変わりなければ、どちらの指標を見ても問題ありません。
「提供するサービスの価格帯」が異なる場合、カスタマーチャーンレートだけを指標とするのは危険です。複数の価格体系で提供している場合、カスタマーチャーンレートは低いパーセンテージで推移していたとしても、上位プラン契約社が解約していくと、レベニューチャーンレートが大幅に悪化するためです。
カスタマーチャーンレートが2%か15%かで5年後の売上に3.8倍の差が出る
例えば、毎月同じ金額のサービスにおいて、毎月の新規顧客獲得数が5年間ずっと一定だったとしましょう。
この場合、チャーンレート(カスタマーとレベニューどちらでも)が2%の時と15%の時と比較すると、5年後の売上は3.8倍も変わります。
15%のまま推移した場合の売上は約4億200万円ですが、2%であれば約15億円になるのです。
また、カスタマーチャーンレートの場合、顧客の残存数分アップセル、クロスセルが見込める可能性が高まり、更に大きな差がつくことも想定されます。
毎月同じ顧客数を獲得するという前提ではありますが、既存顧客のリテンションと比較して、新規顧客の獲得は何倍もの負荷がかかるため、やはりチャーンレートの重要性が分かります。
上位プランと下位プランが存在する場合、カスタマーチャーンレートで見るのは危険!
ここまでは同一価格帯で比較した例でしたので、金額の異なる複数のプランを販売しているケースをみていきましょう。
結論から言いますと、カスタマーチャーンレートのみを指標にするのは危険です。
なぜなら、同じカスタマーチャーンレートでも、そのチャーンレートが掛かるプランの割合によって、非常に大きな差が生まれるからです。カスタマーチャーンレートは同じでも、高いプランの解約率が高ければ、中長期的に大きな損失をもたらすことになってしまうのです。
例として、カスタマーチャーンレートが同じ数値である、2つの企業を考えてみましょう。この2社はどちらも、ハイエンド向けのエンタープライズプランとローエンド向けのベーシックプランの2種類を提供しています。
2社とも毎月、カスタマーチャーンレート、新規契約数とプランの利用割合、毎月の解約数は同じですが、パターンAではハイエンドプランの解約率が1割、ベーシックプランが9割とします。パターンBでは、エンタープライズが2割、ベーシックが8割です。
この場合の5年後
このケースの場合、5年後には年商で140%の差が開いていることがわかります。カスタマーチャーンレートのみを指標とするのが危険である理由も納得でしょう。
チャーンレートを改善していくために必要なカスタマーサクセス
チャーンレートが、どのようにサービスの成長に影響を及ぼすかを紹介してきました。では指標とするチャーンレートが決まった後、その数値を改善をしていくためには、具体的にどのような施策を講じれば良いのでしょうか。
ここで登場するのが「カスタマーサクセス」です。カスタマーサクセスは、直訳すると「顧客の成功」。サービスの利用開始から(場合によっては利用前から)、顧客が成果を出していくまでを、サービス提供者が顧客に伴走して目指していきます。成果を出すまでの過程で、サービス利用料に見合わない成果しかでなければ解約の原因になりますので、それを防ぐための考えです。
まとめ
実際のシュミレーションから、チャーンレートがいかにサブスクリプションビジネスに大きな影響を与えるかについて説明しました。提供するサービスのプランや顧客群によって若干の違いはありますが、基本的な考えについては把握できたでしょう。まずは自社のサービスの、現状を正しく把握して、カスタマーサクセスでチャーンレートの改善に繋げていきましょう。