再生数では指標にならない!? その理由とは

良い動画の定義とは
オウンドメディアで動画を活用する理由はさまざまです。共通しているのは、動画を視聴したユーザーに態度変容を起こしてもらい、こちらが期待するアクションにつなげることでしょう。eコマースであれば購入に繋がる、マンション販売であれば資料請求に繋がる、といった具体的なアクションです。
しかし、こうした動画では、「再生数」は必ずしも指標にはなり得ません。なぜでしょう? それは、再生数は設置されるページのPV数に左右されるためです。当然、PV数が多いページに設置した動画は再生数が多くなります。よって、再生数は独立した指標として評価することができないことになります。
例えば、月間500PVのページに動画を設置して、100再生の見込みを立てたとします。結果80再生に終わった場合、どのように評価すれば良いでしょうか? 次に取り組む際の改善点が見出せるでしょうか?  再生数は設置するページという前提条件を一律にできないため、結果のいかんに関わらず、再現性が乏しいという結論になってしまいます。

「再生率」とオウンドメディアに動画を設置する“必然性”

再生率を動画の指標とする
では、どの指標を採用すべきか? それは「再生率」です。再生率の数値なら、動画化する要素として適切であったかをはかることができます。YouTubeだと「インプレッションのクリック率」と呼ばれるもので、動画配信プラットフォームによって呼び名が変わります。これは、Webサイトに表示された動画プレーヤーの再生ボタンが押された割合です。計算式は、「Webサイト上で動画プレーヤーが表示された回数」÷「再生数」です。具体的に動画プレーヤーがどの程度の表示されたらインプレッションにカウントされるかは、利用するプラットフォームに確認が必要です。
インプレッションのクリック率
※YouTube の Analytics 画面キャプチャー
ユーザーにとっては、動画の再生ボタンを押す心理的なハードルは意外に高いものです。出先であれば、音が出るかもしれないと思うと、押すのをためらいます。通信量も気になります。その懸念を乗り越えて「これは見てみたい」と思わせる動画になり得るかどうかを、制作前に十分吟味する必要があります。
大前提として、動画視聴を目的に企業サイトを訪れるユーザーは稀でしょう。ユーザーはサービスや商品、会社に関する情報を求めて来訪しているのであって、動画を見るためではありません。となると、オウンドメディアでの動画視聴に必然性はなくなります。記事や写真ではなく、動画というフォーマットで表現する理由を考える必要が出てきます。

「再生したい」と思わせる“文脈”を意識する

動画を再生したい文脈
動画を制作する前に、動画でなければならない理由を明確にしなければなりません。動画を作ることを先に決めてから、具体的なターゲットや構成、内容を決めることもあるでしょう。そうではなく、既存のテキスト中心のコンテンツから、動画のほうがより表現しやすい、メッセージが伝わりやすい要素を抜き出してから、動画制作を検討すべきです。
ユーザーが動画視聴するには、「再生したい」と思わせる“文脈”が必要です。“文脈”とは、動画を再生したくなるシナリオと言い換えられます。
皆さんご存知の某家電メーカーの商品は、公式サイトではこのように記載されてます。
文字だけでも良さは伝わってきますが、「2.2kg」が重いのか軽いのか、「コンパクト」や「より短く」がどの程度なのかがよく分かりません。写真でも、ユーザーが実感を伴って理解することは難しいです。しかし、女性が片手で軽々と持ち運んで掃除している動画があればどうでしょうか?
例えば、このような動画を入れたとます。女性でも片手で軽々と掃除機を持って、高い所も簡単に掃除できることが一発で分かります。購入を検討している人を力強く後押しする明確な意図を持って作られた動画ということが、理解できます。

「再生率(インプレッションのクリック率)」から導き出せる適性な制作費と動画の評価

動画で本当にコストをかけるべきポイントの見極め方
これまで、動画活用の指標を、「再生率(インプレッションのクリック率)」にすべき理由を説明してきました。この指標が決まれば、動画の制作費用の目安を算出できます。
具体的にイメージしていただくために、2パターンのシミュレーションを用意しました。それぞれ掲載予定期間、掲載ページのPV数などの前提条件が異なる案件です。 CV (コンバージョン) は最終成果のことです。toBであれば問い合わせや資料請求、メルマガ登録など、toCであれば購入などを想定します。
動画インプレッションシミュレーション
パターンAの場合、Web上で動画によってもたらされる1CVの費用は¥50,000です。パターンBだと¥6,944です。事前にこの程度の数字をシミュレーションできれば、動画の適正な制作費や、制作した動画の評価を算出することができます。
製作費については、例えばパターンAならば、割に合わないので制作費は¥100,000に抑えて1CVの費用を¥16,667まで下げよう、という判断がしやすくなります。
動画の評価については、再生率が目標に至らなかった場合は動画というフォーマット自体がマッチしていない、CV率が至らなかった場合は動画の内容が悪かった、という具合です。
すべての評価を獲得単価で見ればいいわけでも、Webの評価で完結するわけでもありません。また、過去のデータがない場合は、根拠のあるシミュレーションを作るのも難しいでしょう。 それでも、今後動画の制作を検討する際には、上記のような仮説の立て方を参考にしてみてください。徐々に精度が上がってくるでしょう。

まとめ

今回紹介した指標は、いわば動画活用のファーストステップです。他にどのような評価方法、計測方法があるかについては、こちらの記事 もご覧ください。 動画を活用して成果を出すためには、考慮しなければいけない変数が数多くあります。まずは今回ご紹介した「再生率(インプレッションのクリック率)」を追うことが、動画活用の効果を上げる大きな一歩になるでしょう。

この指標を計測できるサービス

「動画活用」に関連する他の記事