OKRは目標管理手法の1つ

OKR(Objectives and Key Results)は目標管理手法の1つ。 GoogleやFacebookなどでも用いられていることから、日本でも注目が集まっているフレームワークです。
しかし、導入したからといって必ずしもうまく機能するとは限りません。 「トップダウンで導入したけど形骸化した」、「社員になかなか浸透しない」などのように失敗したケースもあるでしょう。
とはいえ、こうしたOKRの失敗例から学べることもあるはず。そこで本記事では、OKRの失敗例から失敗しやすい特徴などを紐解いていきます。

失敗例① OKRを上層部だけで決めている

OKR 良い決め方とダメな決め方
OKRは、経営陣やチームリーダーといった一部の社員で決めるものではありません。会社全体でOKRを機能させるためには、経営陣から社員、社員から経営陣への提案を複合的に検討することが重要です。
はじめてOKRを設定する時は、まず経営陣からOKRを導入する意図や期待する効果、目標と成果指標のラフ案などを社員に提示しましょう。 この時、役職を問わず全従業員からの提案を歓迎していると明確に伝えます。
この経営陣からの呼びかけに応じて従業員から出された提案を検討し、提案者との意見交換なども行った上で、会社全体のOKRを設定します。 社員と経営陣の対話によって作られたOKRをもとに、部署やチーム、個人単位のOKRを決めていくのです。
OKRを決める具体的な手順は以下のようになります。
  1. 会社のOKRを決定
  2. 会社のOKRに基づいて各チームがOKRを決定
  3. 所属するチームのOKRを基に各社員が自分のOKRを決定
  4. 会社、チーム、各社員のOKRを社内に公開・共有
OKRの目的は、全社員が同じ方向を向き、明確な優先順位を持って仕事に取り組み、計画を進行することです。 社員一人ひとりが「この目標は自分自身で決めたもの」という当事者意識を抱き、挑戦し続けるモチベーションを維持することがOKR運用には不可欠です。

失敗例② せっかく作ったOKRを共有していない

OKR 共有オンラインとオフライン

OKRは全社で共有してこそ真価を発揮する

会社のOKRを周知したあと、チームとメンバーのOKRを報告してもらうだけでは、OKRを成功に導くには不十分です。
OKRを機能させるには、会社、各部署、社員のOKR全てを全社で共有し、目標に向けた行動スケジュールや成果指標を定期的にチェックする仕組みが必要です。
全員のOKRを共有することで、
  • 「自分がすべきことは何か」
  • 「行動が目標に即しているか」
  • 「他の社員や別のチームと協力できているか」
などとチェックしながら業務を進めることができます。

OKRを共有する仕組み

OKRを全社で共有する仕組み作りには、オフラインとオンラインの2つの方法があります。

社内共通のOKRテンプレートを使う(オフライン)

オフラインでの共有は、社内共通のOKR用シートを作成するやり方です。シートに、会社、部署、従業員のOKRを記入し、会社全体に配布して共有とチェックを行います。
この方法は新たにツールなどを導入する必要がなく、テンプレートさえ作ればすぐに実施できるというメリットがあります。 しかし、規模の大きい会社にとっては、更新や修正に手間や時間がかかってしまうというデメリットもあります。

OKRの可視化サービスを使う(オンライン)

一方、オンラインでの共有方法は、OKRの共有・可視化をするクラウドサービスの導入・活用です。
メリットは情報共有・更新のしやすさ。 ツールの使い方さえ社内に周知すれば、大きな部署や社員の多い企業でもすぐにOKRを共有でき、変更や修正、追記などを行えます。
自社の状況を再確認した上で、こうしたツールの導入も含めた改善法を検討すべきでしょう。

失敗例③ OKRが評価・給与に影響している

OKR 評価・給与に影響

OKRは難易度の高い目標を設定する手法

OKRは達成困難な目標を掲げることがポイント。 達成率が60~70%程度であれば、適切な目標設定だったと考えます。
そのため、人事評価や報酬(給与やボーナス等)に結びつけてしまうと、社員のモチベーションをかえって下げてしまう可能性があります。

OKRは、チームや個人単位で目標が異なる

また、OKRの目標の難易度は部門やチームごとに異なり、主要な成果の達成状況の判断もひとつではないため、目標を定量化するのは難しいもの。 そのため、人事評価や報酬へ反映することは難しく、平等性に欠けると考えられています。

社員が意図的に目標を低くする可能性も?

OKRを人事評価や報酬と連動させた場合、失敗や未達成になることを恐れて、消極的で保守的な目標を設定する可能性が高くなります。
OKRは本来、達成困難な目標に挑戦するための目標管理手法。 成果を出せないと評価が下がってしまう仕組みでは、不安を感じる従業員もいるでしょう。

OKRを参考に総合的な人事評価を行おう

OKRを導入している企業では、個々の社員の評価ではなくチームの評価に用いたり、OKRは単なる参考情報として、社員それぞの成績や能力、勤務態度などを含めた総合的な評価制度を設けるといった工夫をしているケースが見られます。
あくまでもOKRは人事評価制度の基準の一つで、OKRだけを評価基準にすべきではないことを前提としましょう。

失敗例④ 目標設定しただけで、進捗を確認する仕組みがない

OKR 進捗を確認する場がない
上で述べたOKRの社内共有に加えて、設定したOKRの進捗を確認し合う機会を定期的に設けることも、OKR実践の重要ポイントです。
OKRの進捗確認には大きく分けて3つパターンがあります。
  • チェックインミーティング
  • ウィンセッション
  • 1on1ミーティング

チェックインミーティング

週の初めにチームごとにOKRの進捗や自信度、達成までの課題とその解決策などを共有し、この1週間で取り組むアクションを具体的に確認します。 所要時間は1時間以内で、毎週1回開催するのが一般的です。
このミーティングによって、チームの進むべき方向性を明確にしてその週の業務をスタートできるため、チームの協力体制や一体感の強化が期待できます。

ウィンセッション

一般的に、金曜夕方に開催し、社員同士でがOKRの進捗と成果を発表して称え合う場を「ウィンセッション」といいます。 お菓子や飲み物を準備する企業もあり、会社が従業員に感謝の気持ちを表す場でもあります。
達成が難しい目標に向かって1週間挑戦してきたことをお互いに称え合うことによって、OKRに取り組むモチベーションの維持を図ります。 またウィンセッションは、他の従業員やチームの共有を通じて、会社全体のOKRの進み具合を把握する機会でもあります。

1on1ミーティング

1on1ミーティングはチームリーダーとメンバーとの話し合いの場です。開催頻度は週1回程度が理想的と言われています。
リーダーがメンバーに対して「行動がチームの目標に貢献しているか」「他の社員との協力体制が取れているか」などの質問をし、部下の進捗状況や問題点を把握します。
リーダーと1対1でコミュニケーションを取ることによって、社員は自身のOKRについて再認識し、担当する業務の課題や悩みを相談することができます。

失敗例⑤ 一度決めたOKRを見直していない

OKR 見直していない
OKRで設定した目標および運用ルールは一度設定すればそれで終わり、というものではありません。 修正や変更は当たり前という認識を持つことがポイントのひとつです。
業務の進捗状況やビジネス環境の変化などに応じて、細やかに変更を行っていきましょう。 ウィンセッションやチェックインミーティングなどで、リーダーが各メンバーの状況を定期的に確認し、業務量や難易度にギャップがあると判断した場合には、OKRで設定した目標の変更指示を迅速に行うべきです。

OKRにおける目標設定の具体的な作り方

本記事ではOKRの具体的な失敗例をみてきました。
OKRはすぐに効果が期待できるものではありません。中長期的な運用を続け会社に一体感が醸成され、情報共有がスムーズに進むといった成果が、多くの企業から報告されています。
そんなOKRの具体的な作り方が気になる方のために、以下記事で、
  • OKRとMBOの違い
  • OKRの具体的な作り方
について解説しているので、ぜひご覧ください!