メールの返信、資料作成、会議、企画提出、プレゼン準備、仕事の納期……うわあああああ!! 何から手を付けていいのか分からない。とりあえず片っ端からやっているけど効率が悪くていつも長時間労働。
こんな苦しい働き方していませんか? そんな人にオススメしたい仕事術「時間管理マトリクス」。この方法を使えば、業務を緊急度と重要度で分けることができ、着手すべき優先度が明確になります。
「時間管理マトリクス」のテクニックは、第34代アメリカ大統領ドワイト・D・アイゼンハワーの仕事術(重要性と緊急性でタスクを分類することで有名)を元に、『7つの習慣ー人格主義の回復』の著者スティーブン・コヴィーによって体系化されました。
この記事では、仕事の優先度を可視化する「時間管理マトリクス」の使い方と、そこからどのように行動するかを解説していきます。

まずは「緊急度」と「重要度」で業務の優先順位を決める

時間管理マトリクスで「緊急度」と「重要度」の振り分け
よく聞く「ToDoリスト」を作って業務を管理しても、リストを作っただけで満足して、実際には時間がかかってしまった経験はありませんか?労働時間が長くなれば、体調を崩すことにも繋がりますし、それが原因で重大なミスをしてしまうこともあるでしょう。
これを回避するためには、ToDoリストを作るだけでなく、ここに一つ手間加えることが重要になってきます。このToDoリストのタスクを「緊急度」と「重要度」で振り分けて整理する方法が「時間管理マトリクス」です。

緊急度と重要度はまったく別物

緊急度と重要度の2種類に分けて考える大きな理由は、この2つが仕事において全く異なる意味を持つからです。
緊急度と重要度に分けて考える最大の理由は、この2つが仕事において全く異なる意味を持つためです。
「緊急度」の高い仕事とは、
  • 納期が短い
  • 放置すると後からリカバリーしにくい
といった特徴があり、例えば日報や会議の議事録などが挙げられます。
しかし、業務の中には自分や会社にとって必ずしも重要でない、やってもやらなくてもさほど影響のないタスクがあるのも事実です。
「重要度」の高い仕事とは、
会社の事業などに直接影響を与えるものです。お客様からの見積依頼や問い合わせが分かりやすい例です。手をつけずに放置すると、会社にとって長期的な損失となる可能性が高いタスクを指します。
そして何より覚えておいていただきたいのが、「重要度=緊急性」ではないということ。納期が設定されていなくても重要な仕事はすぐにやるべきですし、緊急でも重要度の低い仕事は、できるだけ短い時間で片付けるなどの工夫が必要です。

緊急度と重要度を交えた視点から考える

仕事が効率良く回せない人は、ただ単に「受けた順番に仕事をこなす」「納期が一番近いものからこなす」というやり方をしてしまいがちです。仕事に着手する前に、重要度と緊急度を考えることが大切です。
このとき気を付けたいのは、仕事を緊急度と重要度にそれぞれ振り分けるということではなく、1つの仕事に対して、緊急度と重要度の2つの側面から考えるということです。
試しに、2つの仕事を振り分けてみましょう。
①「さらに事業を進展させたいから、新しい企画を提出する」
 →重要度:高 緊急度:低
②「急ぎのメールの返信がある。内容はそれほど重要でない」
 →重要度:低 緊急度:高
①は緊急度が低いですが、自身のキャリアアップや会社の発展のためには欠かせない重要な仕事です。一方で②は重要度の低い仕事ですが、急ぎの用事のため緊急度は高くなります。
この考えをまとめると、「緊急度が高いメールをパパッと返信して、そのあとに企画案をじっくり考えよう」と判断できます。このように業務ごとに緊急度と重要度の側面から考えることで、実際に手を動かすべき仕事の優先順位がつけやすくなります。

キーワードは客観性。「時間管理マトリクス」をさらに使いこなせ!

時間管理マトリクスの客観的な優先順位のつけかた
優先順位をつけることで仕事の効率が良くなる一方、「自分が勝手に緊急度や重要度を決めていいの?」という疑問が出てくるかもしれません。自分は重要じゃないと思う業務でも、上司は重要だと考えている場合ですね。
こういったギャップを防ぐために、なるべく客観的に優先順位をつける必要があります。ここで登場するのが、そう「時間管理マトリクス」です。
これは先ほど「緊急度」と「重要度」の2種類に分けた仕事を、さらに4つに分類する方法です。パターンA〜Dに分けて見ていきましょう。
  • パターンA…緊急度も重要度も「高」
    緊急で重要な仕事です。自分にとって(あるいは会社にとって)重要な仕事で、さらに緊急度が高いので急いで仕上げる必要がある。
緊急度が高い仕事は、無理な納期で引き受けた仕事だったり、トラブル対応、突発的な仕事など。また、次に紹介するパターンBの仕事を先送りすると、このパターンAに振り分けられることもあります。
  • パターンB…緊急度は「低」で重要度は「高」
    自分や会社にとって価値があり、長期的に関わってくる仕事です。人材育成、会議の下準備といった社内業務だけでなく、健康維持のため運動、スキルアップの資格勉強などが該当します。
緊急性は低いですが、時間確保をせず後回しにした結果、パターンAになってしまうこともあります。
  • パターンC…緊急度は「高」が重要度は「低」
    突然の電話対応や意味のない会議など、自分にとっては重要度は低いものの他の誰かにとっては急を要する仕事です。緊急なので当然すぐさま着手しなければなりませんが、こればかりに時間を割くとパターンBの仕事ができなくなり、自分や会社の将来に影響を及ぼすこともあります。
パターンD…緊急度も重要度も「低」
自分にとって緊急でもなく重要でもない仕事もあります。このパターンDの仕事は可能な限りやらずに済むよう調整するのが得策です。
では、どのようにして緊急でもなく重要でもないと判断すればよいのでしょうか? ズバリ、判断基準は「時間の浪費」です。例えば会議中に発生する雑談や、業務中の暇つぶしの時間などは時間を消費ではなく、単に浪費している仕事と言えます。他にも、なんとなく勉強が必要だから勉強したり、企画を考えたほうが良い気がするから意味もなく考える……といった、一見すると自己啓発のような行為もこれに当てはまります。
ただし、他の人から無駄と思える行動でも本人が「有意義な時間だ」と感じるのであればパターンDではなくAからCのどこかに振り分けましょう。
振り分けが済んだら、次に「短期的」「長期的」の2つの時間軸から判断し仕事を実行します。
短期的にはA→B→C→Dの順に着手し、長期的にはB→A→C→Dの順に行うと効率よく仕事が進められます。そしてDに当てはまるものは、なるべく減らす方向にもっていきましょう。
もちろん、Aが全て済んだらBに……ということではありません。Aの中で締め切りが近いものが一通り終わったらBも同時に……と進めることでパターンAに入ってしまう仕事をどんどん減らして余裕を持って仕事を回せるようになります。

ただ仕事をするだけの自分から一歩前進

時間管理マトリクスは緊急度と重要度の中から優先度を見つけます
仕事を緊急度と重要度で大きく4種類に分けることで、客観的に計画を立てて仕事に取り組むことができます。
日々の仕事はこなしているものの、中長期的に見てキャリアップに繋がらなかったり、今のやり方で体調を崩しがちになっている人はパターンBの仕事ができていない可能性があります。このパターンBの仕事をするための時間を確保することで、ただ仕事をするだけの毎日から脱却できます。
緊急ならすぐに取り組まないと! と勢いで優先してしまう人は少なくありませんが、「緊急ではないけど重要なこと」は誰にも急かされないせいで、後回しになりがちです。時間管理マトリクスを上手に使って、仕事の優先順位をつけてみましょう。

自分にとって重要なことを考えて仕事を上手に管理しよう

時間管理マトリクスで自分にとって重要な仕事を上手に管理
ただ単に時間を作れば重要な仕事ができるわけではありません。パターンDのような無駄な時間をなくしても、パターンCのような意味のない会議や電話対応に時間を費やしていては、いつまでたっても仕事に追われるだけの状態です。
仕事はしているはずなのに全然終わらない……と感じる人は、生きる上で「自分にとって重要な仕事とはなにか」を明確にしましょう。自分にとって何が重要か見当もつかないという人も、時間管理マトリクスを用いれば「重要なこと」が浮かび上がるきっかけになるでしょう。ぜひ一度この方法を試してみてください。